卦辞

元(おお)いに亨(とお)る。牝馬(ひんば)の貞(てい)に利あり。君子往(ゆ)くところあり。先に迷えば後(のち)に主(あるじ)を得。利あり。西南に友を得、東北に友を失う。安貞なれば吉なり。

坤の卦は、大地の如く万物を包容し、静かに育む「受容」の究極の智慧を説きます。これは、能動的に事を成すのではなく、柔軟な姿勢で環境や他者を受け止めることの尊さを示しています。「牝馬(ひんば)の貞」とは、荒々しい力に頼らず、目的地に向かって着実に、従順な忍耐を続ける強さを意味します。何か新たな事を始める際、我先に主導権を握ろうとすれば「先迷」い、道を見失います。しかし、優れた理念やリーダーに従い、誠実に自己の役割を全うすれば、やがて「後得主」となり、真のパートナーや成功を得られるのです。

現代社会において、この卦は協調性と「待つ」ことの勇気を教えてくれます。常に先頭に立つことへの焦りを捨て、今はチームの基盤となり、周囲を支えることに注力してください。焦って出る杭にならず、状況に深く寄り添うことで、逆に自分の存在価値は確固たるものとなります。「西南得朋、東北喪朋」は、孤立せず、人と和することの利を説いています。孤独な闘争ではなく、対話と調和によって心は安らぎ、道は開けるのです。静かなる受容の態度こそが、最大の実りをもたらすでしょう。

卦体

初六

霜(しも)を履(ふ)みて堅氷(けんぴょう)至る。

六二

直方(ちょくほう)大(だい)なり。習わずして利(り)あらざるなし。

六三

章(しょう)を含(ふく)みて貞(てい)にすべし。或(あるい)は王事に従い、成(な)すことなくして終わりあり。

六四

嚢(ふくろ)を括(くく)る。咎もなく誉れもなし。

六五

黄裳(こうしょう)、元(げん)吉なり。

上六

龍、野(の)に戦う。その血、玄黄(げんこう)なり。

用六

永(なが)く貞(ただ)しきに利(り)あり。