卦辞

小(すこ)しく亨(とお)る。旅(りょ)は貞(ただ)しくして吉なり。

「旅」の卦は、火が山の上で燃え移り、留まることを知らない姿に象徴されます。これは、人生における通過期や、不安定な環境に身を置く状況を意味します。卦辞にある「小亨」は、大きな成果を焦るのではなく、今ある場で誠実に小さな歩みを進めることこそが、道を開く鍵であると説いています。

現代社会において、この卦は転職、引越し、あるいは慣れないプロジェクトへの参加など、自分が「異邦人」として振る舞うべき局面を示唆しています。心理的には、一時的な居場所に安住しようとする執着を手放し、旅人としての軽やかな謙虚さを持つことが求められます。周囲に同調しすぎず、かといって孤立せず、自分の内なる規範(貞)を静かに守ることで、不慣れな風土の中でも吉兆を見出すことができるでしょう。変化を恐れず、その場限りの役割を全うする覚悟が、あなたの魂を成長させます。

卦体

初六

旅(たび)にして瑣瑣(ささ)たり。これその災(わざわい)を取るところなり。

六二

旅(たび)にして次(やど)に即(つ)く。その資(たから)を懐(いだ)き、童仆(どうぼく)の貞(てい)を得。

九三

旅(たび)にしてその次(やど)を焚(や)く。その童仆を喪(うしな)う。貞(ただ)しけれども危(あやう)し。

九四

旅(たび)にして処(じょ)に在(あ)り。その資斧(しふ)を得。わが心快(こころよ)からず。

六五

雉(きぎす)を射(い)て、一矢(いっし)を亡(うしな)う。終(ついに)以(もっ)て誉(ほまれ)ある命(めい)あり。

上九

鳥、その巣(す)を焚(や)く。旅人(たびびと)先に笑いて後に号咷(ごうとう)す。牛を易(えき)に喪(うしな)う。凶なり。