卦辞
孚(まこと)あり。維(こ)れ心(こころ)亨(とお)る。行(ゆ)けば尚(たっと)ばるることあり。
「習坎」は、水が重なる象徴を通じて、人生に潜む避けがたい困難と深淵を示唆しています。しかし、この卦が説くのは絶望ではなく、逆境における精神の在り方です。「有孚、維心亨」という卦辞は、外部環境がいかに険しくとも、内なる誠実さと信念を堅持する限り、心の通路は開かれ続けることを教えています。
水は容器の形に従い、低きへと流れる特性を持ちます。同様に、私たちも困難という深淵に直面した時、それに抵抗して無駄にエネルギーを消耗するのではなく、その現実の深さを十分に受け入れる柔軟さが必要です。真の強さは、壁を打ち破ることではなく、水のように隙間を見つけて流れることにあります。「行有尚」とあるように、誠意を伴うたゆまぬ実践だけが、閉塞感を打破し、新たな価値を生み出すのです。これは、危機を内面の成熟へと昇華させる、静謐な哲学の極致と言えます。
卦体
初六
習坎(しゅうかん)。坎窞(かんたん)に入る。凶なり。
九二
坎(かん)に険(けん)あり。求むれば小(すこ)しく得。
六三
来(きた)るも行くも坎坎(かんかん)たり。険(けん)にして且(か)つ枕(しず)む。坎窞(かんたん)に入る。用(もち)うるなかれ。
六四
樽酒(そんしゅ)、簋(き)貳(じ)、缶(ふ)を用(もっ)てし、約(やく)を牖(まど)より納(い)る。終(ついに)咎なし。
九五
坎(かん)盈(み)たず。祗(ただ)に既(すで)に平(たい)らかなり。咎なし。
上六
係(つな)ぐに徽纆(きぼく)を以(もっ)てし、叢棘(そうきょく)に寘(お)く。三歳(さんさい)まで得ず。凶なり。