卦辞

王庭(おうてい)に揚(あ)ぐ。孚(まこと)ありて号(さけ)ぶ、危(あやう)きあり。邑(ゆう)より告(つ)ぐ。戎(じゅう)に即(つ)くに利あらず。往(ゆ)くところあるに利あり。

【夬】の卦は、長く積み重ねた陽の気が、最後に残る陰の障害を突破しようとする「決断」の瞬間を象徴しています。これは、単なる力による解決ではなく、真実を明らかにすることによる浄化のプロセスです。「王庭に揚ぐ」とある通り、隠しごとをせず、事態を公明正大にすることが何よりも肝要です。自らの立場を周囲に宣言することで、内なる迷いを断ち切り、明晰な意志を確立するのです。

しかし、「孚号有厉(信を号して厲(あやう)きあり)」と警告するように、決断には常にリスクが伴います。それゆえに「即戎(すなわちじゅう)するに利ろしからず」と、感情的な衝突や攻撃的な手段に頼ってはならないと戒めています。現代の生活においては、職場の不条理な慣習や、人間関係のしがらみを断ち切る局面に当たります。相手を攻め落とすのではなく、論理と誠実さを武器に堂々と対峙することで、状況を好転させる知恵が求められます。自らの良心に従い、勇気を持って一歩を踏み出すならば、必ずや先へと進めるでしょう。

卦体

初九

前の趾(あし)に壮(さかん)なり。往(ゆ)きて勝(か)たざれば咎(とが)となる。

九二

惕(おそ)れて号(さけ)ぶ。莫夜(ばくや)に戎(じゅう)ありとも恤(うれ)うるなかれ。

九三

頄(こう)に壮(さかん)なり。凶あり。君子夬夬(かいかい)として独り行く。雨に遇(あ)いて濡(ぬ)るるが如(ごと)し。愠(いか)りありとも咎なし。

九四

臀(しり)に膚(はだえ)なし。その行くこと次且(ししょ)たり。羊を牽(ひ)けば悔(くい)亡(ほろ)ぶ。言(こと)を聞けども信ぜず。

九五

莧陸(かんりく)夬夬(かいかい)たり。中行(ちゅうこう)すれば咎なし。

上六

号(さけ)ぶなし。終(ついに)凶あり。