卦辞

亨(とお)る。我(われ)より童蒙(どうもう)に求むるにあらず、童蒙より我に求む。初筮(しょぜい)には告(つ)ぐ。再三すれば涜(けが)る。涜(けが)るれば則(すなわ)ち告(つ)がず。貞(ただ)しきに利(り)あり。

蒙(もう)の卦は、山の下に泉が潜る姿を象徴し、未知なる可能性と学びの始まりを示唆しています。これは単なる無知ではなく、知恵を求める「未熟さ」としての謙虚さです。卦辞にある「匪我求童蒙、童蒙求我(私が童蒙を求めるのではなく、童蒙が私を求める)」とは、真の導きは外から強制されるものではなく、学ぶ側の能動的な欲求から始まるという真理を諭しています。

現代の日常生活において、これは他者への過度な依存を戒めています。誰かに答えを押し付けられるのを待つのではなく、自らの内なる問いを明確に持ち、師や知識、あるいは自身の直感に歩み寄る姿勢が不可欠です。また「初筮告、再三渎」は、一度の誠実な問いには応えられるが、不信から繰り返す問いには応えられないことを意味します。これは決定の場面における重要な心理的教訓です。直感や理性に基づき一度結論を出した後、不安に駆られて何度も問い直すのは、自身の判断力への冒涜であり、迷いを深めるだけです。迷いを断ち、誠実に貫く「利貞」の精神こそが、蒙昧を解き、自らの道を切り拓く鍵となるでしょう。

卦体

初六

蒙(もう)を発(ひら)く。人を刑(けい)するを用いるに利あり。桎梏(しっこく)を説(と)くを用(もっ)てす。往(ゆ)けば吝(りん)なり。

九二

蒙を包(い)る。吉なり。婦(つま)を納(い)る。吉なり。子(こ)は家を克(よ)くす。

六三

女(じょ)を取(めと)るに用(もち)うるなかれ。金夫(きんぷ)を見て躬(み)を有(たも)たず。往(ゆ)くところ利なし。

六四

蒙(もう)に困(くる)しむ。吝(りん)なり。

六五

童蒙(どうもう)なり。吉なり。

上九

蒙を撃(う)つ。寇(あだ)をなすに利あらず。寇を禦(ふせ)ぐに利あり。