卦辞
邑(ゆう)を改(あらた)めて井(せい)を改めず。喪(うしな)うなく得るなし。往(ゆ)き来(きた)りて井(せい)を井(せい)とす。汔(ほとん)ど至らんとするに、またいまだ井(せい)を繘(つりい)ださず、その瓶(へい)を羸(やぶ)る。凶なり。
「井」の卦は、社会における不変の精神や、個人の内なる無限の可能性を象徴するものです。町が移り変わっても井戸はその場に留まり、人々は往来してその水を汲み取ります。これは、外部環境の変化に流されることなく、自分の核心となる価値観や信念を貫くことの尊さを説いています。
現代の喧騒の中で、私たちはしばしば流行や他人の評価に右往左往しがちですが、この卦は「自分という井戸」を丁寧に掘り下げ、磨き続けることの意義を問いかけています。しかし、そこには深い警鐘が鳴らされています。「水がほとんど届いたのに、縄を垂れ下ろさず、あるいは瓶を壊してしまう」という凶の象徴です。これは、成功目前で諦めてしまう無念さや、油断によってせっかくの成果を台無しにしてしまう愚かさを示しています。
したがって、日々の生活においては、目先の利益や変化に惑わされず、自分の内なる源泉を信じて着実に努力を積み重ねることが肝要です。そして、成果が見え始めたからこそ気を引き締め、最後まで慎重かつ誠実に行動を完遂させる忍耐強さが求められているのです。
卦体
井(せい)の泥(どろ)なれば食(くら)われず。旧井(きゅうせい)には禽(とり)なし。
井の谷(たに)に鲋(ふな)を射(い)る。瓮(おう)敝(やぶ)れて漏(も)る。
井(せい)渫(きよ)められて食(くら)われざれば、わが心惻(いた)む。用(もっ)て汲(く)むべし。王明(あき)らかなれば、並(とも)にその福を受けん。
井(せい)に甃(いしだた)みす。咎なし。
井(せい)冽(きよ)く、寒泉(かんせん)を食(くら)う。
井(せい)収(な)りて幕(おお)うなかれ。孚(まこと)ありて元(げん)吉なり。