卦辞

艱(かた)く貞(ただ)しきに利(り)あり。

「明夷」は、光が地中に没し、明かりが傷つく象徴です。これは、あなたの本来の能力や誠実さが、現状の環境や周囲の人々によって覆い隠され、正当に評価されない時期を暗示しています。しかし、卦辞の「艱貞に利し(艱難辛苦して貞しいに利ろし)」は、この苦境こそが精神的な成熟を促す重要な機会であると説いています。

現代の日常において、例えば職場で理不尽な扱いを受けたり、自身の理念が理解されず孤立感を味わったりすることがあるでしょう。このような時、焦って外部で認められようと力んだり、無謀な反発を試みたりするのは得策ではありません。真の知恵は、一時的にその輝きを隠し、内なる世界へと意識を向けることにあります。評価されない辛抱を「自己研鑽の時間」と捉え直し、揺るぎない信念を持って耐え抜くことこそが、未来への糧となるのです。闇は光を消すのではなく、次の輝きのために力を蓄える時間です。今は静かに己を磨き、時が来るのを待つ賢明さが求められています。

卦体

初九

明夷(めいい)に飛ぶ、その翼(つばさ)を垂(た)る。君子往(ゆ)くところあれば、三日食(くら)わず。往(ゆ)くところあれば、主人言(こと)あり。

六二

明夷(めいい)なり。左の股(もも)を夷(きず)つけらる。用(もっ)て拯(すく)うに馬の壮(さかん)なれば吉なり。

九三

明夷(めいい)に南狩(なんしゅう)し、その大首(たいしゅ)を得。疾(と)く貞(ただ)しくすべからず。

六四

左の腹(はら)に入り、明夷(めいい)の心(こころ)を獲(え)て、門庭(もんてい)を出(い)づ。

六五

箕子(きし)の明夷(めいい)なり。貞(ただ)しきに利(り)あり。

上六

明るからずして晦(くら)し。初めには天に登り、後には地に入る。